建物・土地活用ガイド

2022/09/15

ZEHマンションとそのメリットは?

ZEHという言葉は広く浸透してきました。ZEHとは「NET ZERO ENERGY HOUSE(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」のことで、省エネルギー性能と創エネルギー性能を兼ね備えた住宅のことを指します。
住宅と一口にいっても、主に個人住宅である戸建住宅から大規模マンションまで、そのサイズは様々です。ZEHの中でも、とくに集合住宅(≒マンション)についてはZEH−Mと呼ばれています。

戸建住宅におけるZEHは2020年ごろから広まりつつありますが、賃貸用住宅(マンション等)においてはまだこれからという段階です。政府は2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言していますので、これからはZEH賃貸住宅が当たり前の時代になってくるものと思われます。

今回の原稿では、ZEH−M(ゼッチマンション)について、「これだけは知っておきたい」ことを解説したいと思います。

省エネ基準適合住宅

建物省エネ法に基づき、その基準をクリアした住宅は「省エネ基準基準適合住宅」と呼ばれます。ZEHは省エネ+創エネをクリアした住宅のことで、ZEHの省エネ基準は「建物省エネ法」とは若干異なりますが、概要は概ね似通っています。
国土交通省によれば、令和元年(2019年)に建てられた住宅のうち全体の81%が省エネ基準適合住宅でした。平成27年(2015年)に建てられた住宅では46%でしたので、大幅に増えたことになります。これを規模別で見れば、令和元年には小規模(300u未満)は87%、中規模(300〜2000u未満)では75%、大規模(2000u以上)では68%となっています。
いずれも年々増加していますが、大きな住宅(大規模集合住宅)の方が個人の住宅に比べてやや割合が少ないようです。

ZEHの定義

国土交通省の資料によれば、「ZEHとは、快適な室内環境を保ちながら、住宅の高断熱化と高効率設備によりできる限りの省エネルギーに努め、太陽光発電等によりエネルギーを創ることで、1年間で消費する住宅のエネルギー量が正味(ネット)で概ねゼロ以下となる住宅」と定義されています。

具体的には

1)高断熱化(断熱基準は寒冷地など地域区分別に異なります。省エネ基準よりも少し厳しい数字となっています。)
天井・外壁・窓・床など、建物の外側を形成する断熱性能の基準値(強化外皮基準)を、平成28年省エネ基準値を上回る性能にする

2)設備品の高効率化
冷暖房設備、換気設備、照明、給湯
(省エネ基準相当から−20%のエネルギー削減)

これに加えて

3)創エネルギー
太陽光発電によりエネルギーを創りだし、余剰売電分を考慮し、1次エネルギー消費量を正味ゼロ以下にする

という組み立てになっています。

ZEH−Mと適合基準

ZEHマンションは、棟の単位(あるいは住戸の単位)でその適合基準が設けられていますが、そのうち「再生可能エネルギーを加えて、共用部を含む当該住棟全体で、基準一次エネルギー消費量から 何%以上の一次エネルギー消費量削減しているか」により、区別されています。

1)ZEH−M(ゼッチ・マンション)
再生可能エネルギーを加えて、基準一次エネルギー消費量から 100%以上の一次エネルギー消費量削減されているもの。

2)Nearly ZEH−M(ニアリー・ゼッチ・マンション)
再生可能エネルギーを加えて、基準一次エネルギー消費量から 75%以上 100%未満の一次エネルギー消費量削減されているもの。

3)ZEH−M Ready(ゼッチ・マンション・レディ)
再生可能エネルギーを加えて、基準一次エネルギー消費量から 50%以上 75%未満の一次エネルギー消費量削減されているもの。

4)ZEH−M Oriented(ゼッチ・マンション・オリエンテッド)
再生可能エネルギーを加えて、基準一次エネルギー消費量から 25%以上 50%未満の一次エネルギー消費量削減されているもの。

※ZEHでは全項に共通して「全ての住戸について強化外皮基準(地域ごとに要求されている断熱性能の指標)に適合」「再生可能エネルギーを除いた20%以上の一次エネルギー消費量削減」が定義されています。
※ZEH−M、Nearly ZEH−Mは1~3階層、ZEH−M Readyは4〜5階層、ZEH−M Orientedは6階層以上のマンションで目指すべき水準として定義されています。


経産省/環境省資料より

国の支援策

ZEHを広く浸透させるために、国は様々な支援を行っています。
支援は「補助金」と「融資」と「減税」に分かれます。

補助金
長期優良住宅の整備に対する支援[国交省]
 (長期優良住宅化リフォーム推進事業)
ZEHの整備に対する支援[経産省・環境省・国交省]
 (集合住宅の省CO2化促進事業(超高層ZEH-M実証事業・高層ZEH-M支援事業・中層ZEH-M支援事業・低層ZEH-M支援事業)、住宅エコリフォーム推進事業、住宅・建築物省エネ改修推進事業等)

融資支援
長期優良住宅又はZEHを対象とした金利引き下げ制度[住宅金融支援機構]

減税
住宅の新築に係る税の特例措置[国交省]
 (ZEH水準省エネ住宅、認定長期優良住宅・認定低炭素住宅・省エネ基準適合住宅等)

※上記の適用は個々に条件が異なります。委託する建設会社へご相談ください。

ZEHマンションオーナーのメリットは?

ZEH−M仕様の賃貸マンションでは、環境意識、省エネ意識の高い比較的高年収ゾーンの方に支持を受けることが期待できます。
また、高断熱性の快適性やまた設備の高効率化による省エネ性といった付加価値をつけることで、他の賃貸マンションとの差異化が図れます。こうしたことで、同一世帯の長期間の入居が期待できます。

ZEHマンション入居者のメリットは?

一方、ZEHマンション入居者のメリットですが、高い断熱性能と高性能省エネ設備、そして太陽光発電を利用することで毎月の光熱費の減額が期待できます。高断熱のマンションですから、一年を通して快適に過ごす事ができるでしょう。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

疑問に思うこと、お困りごとなど、まずはお気軽にご相談ください

  • ご相談・お問合わせ
  • カタログ請求

建築・土地活用ガイド一覧へ