• 営業担当エピソード

お客様への寄り添い――桜に引き継がれ、広がる未来への物語

住み家は変わっても、大切なものは家族の歴史とともに引き継がれていく。
毎年窓から眺める桜に癒やされてきた老夫婦への、寄り添いをカタチにした提案です。

営業のきっかけは、お客様ご夫婦のご長男が、当社施工の賃貸マンションで生活しているため、大変住みやすいマンションだと気に入られていたことに始まります。
ご長男は以前より、将来的には実家を建て替えて、居宅付マンションにしたいと考えており、お住まいのマンションのオーナー様経由で当社へお話をいただきました。
マンション計画地である敷地約350坪には、自宅、倉庫、借家、駐車場があり、とくに自宅は、築60年の木造建築で老朽化が進んでいるそうでした。
現地で建物を確認してみると、ご長男が建て替えを急がれる理由が、私にも納得できました。外観からも、建物の傷み具合は明らかです。私は早速、自宅の建替え案を含め、数パターンのご提案をしました。

提案当初こそ、ご両親は自宅を建て替えるプランに関心を示されましたが、面談を重ねてもこちらの計画案に賛成されるそぶりが見られません。
実は、ご両親は長年お住まいの自宅に愛着を持たれており、共同住宅内に自分たちの自宅をもうけることに、内心では不安を感じられていたのです。そのため、親子間での意見が分かれ、話が停滞していたのでした。

ご両親とマンションでの同居を待ちわびるご長男は、「何とか建て替えを進められるよう両親を説得してほしい」と、私に相談されました。
お気持ちはわかるものの、ご両親にとって何が心理的な負担であるのかを把握しないことには、計画を進めることはできません。
そこで、私からご両親の本音を引き出すために、可能な限りご自宅への訪問を行い、おふたりに宿題をいただくことを意識して、関係の構築に努めました。
ご両親との対話を重ねるうちに、何が問題であるのかが掴めてきました。おふたりは樹齢60年の桜の木に大変愛着があるのだと、私に打ち明けてくださいました。
コンクリートの建物での暮らしへの戸惑いと、それ以上に、毎年春になると窓から見える桜に癒やされてきた、なじみ深い桜の木が切り倒されることに、抵抗されていたのです。

ご両親の本音をようやくお聞きすることができた私は、新たな計画案の作成に入りました。
桜の木をマンションのシンボルツリーに見立てたアプローチに変更したのです。
桜の木を残せば、ご両親が今まで通りに桜を眺めるだけでなく、お孫様や他のご家族、入居者の方々も、桜を介した交流の場をもてます。
植栽が好きなお母様のために、桜の木を中心に好きな植物を配置するガーデニングアプローチを提案すると、ご両親も大変気に入っていただけました。
ご家族全員の気持ちが一致してからは、計画は順調に進んでいきました。

そして、皆様が入居を楽しみにしていた居宅付マンションの竣工を迎えた時に、私はご両親より、お褒めの言葉をいただいたのです。
「木造の建物からコンクリートのマンションに移り住むのに抵抗があったけれど、私たちの住みたいイメージを最大限、カタチにしてもらえました。桜の木も今まで通りで、しかも、孫とも住めるようになり感謝しかありません」

お客様への寄り添いの本質を、私はご両親の想いをカタチにする過程で体得したように思います。お客様に寄り添うことの意味を理解できたこの経験は、私の営業における基本になっています。