一般的な木造建築における狭いスパングリッド(1.8ｍ〜3.6ｍ)から、
木造2方向ラーメン構造の開発により
中高層混構造建築で10ｍスパンが可能に！
■壁量に制約されない広い空間　■自由な窓配置　■新接合技術による工期短縮

��松建設株式会社（本社：大阪府大阪市、代表取締役社長：��松孝年、以下当社）は東京都港区において、主要構造部に大断面木材を用いた2方向ラーメン構造による、6階建て混構造ビル（鉄骨造＋木造）を建設します。この建物に新しく使用する柱・梁の接合構法は（株）織本構造設計が特許出願中（特願2023-171878)のものです。
従来の木造建築では、1.8m~3.6mの柱スパンで設計されており、また耐力壁、筋交いにより、室内空間の広さや、窓の位置・大きさに制約がありました。今回採用した上記木造2方向ラーメン構造は、耐力壁や筋交いを必要とせず、最大10mまでスパンを拡大可能*な構造を実現しました。これにより、連続した広い室内空間を確保でき、開ロ部の大きさや設置位置の自由度が広がります。
また、今回（株）織本構造設計が新たに考案した柱・梁の接合構法は、鉄骨工事と同等の現場施工プロセスを可能にし、従来の木造接合構法を用いた建て方工事に比べ、工期を含めた現場労務袈の大幅な削減が期待出来るとともに、今後の木造2方向ラーメン構造にも展開できる技術です。

※本物件は最大スパン9.8ｍ×4ｍで計画しています。

大断面集成材：短辺150mm以上、断面積300cm2以上の構造用集成材で大型木造施設に使用されます。
BP材：木心（髄）を有する杉角材を重ねた木質材料です。一般の集成材と比較し、製作時間が短く同等の強度があります。

■木構造を取り入れた建築計画の背景
都内、老朽化したビルの建替え案件において、敷地が鉄道高架に近接し、地下直下に鉄道が通っているという、厳しい条件のもと建築計画が進められました。
建物の解体〜新築の実質工事時間に大きな制約を受けると共に、新築建物の荷重面でも厳しい制限がありました。これらに対応するため、まず木構造を取り入れ軽量化を図り、1〜2階を鉄骨造、3〜6階を木造という立面混構造としました。さらに2方向ラーメン構造を採用し、在来軸組工法では難しかった、広い室内空間の確保などの、事務所用途に応えられるプランが可能となりました。しかし施工面においては、工期を短縮できる合理的な柱・梁の接合構法の開発が待ち望まれていました。

■柱梁接合方法について

 

従来の木造接合方法である、埋め込みロッドによる接合「グルード・イン・ロッド接合」(GIR接合）は、鋼棒の挿入や接着剤の注入をすべて現場で行う必要があり、大きな施工時間と手間を要します。これに対し、本構法は、接合専用治具を取り付けた柱と、予め工場で鋼棒・高ナットを挿入し接着剤で固定した梁を、現場に搬入し、現場ではボルト締結するだけで完了するというものです。現場での作業を大幅に省力化でき、従来のGIR接合に比べて大幅な工期短縮を見込めます。
本接合構法の構造設計・構造計算時のモデル化・仮定条件の妥当性を検証するため、実大木造2方向ラーメン架構試験体の加力実験を実施しました。長期荷重相当の鉛直軸力、2方向水平力が作用する状況においても、安定した荷重―変形関係が確認出来ました。実験結果に基づいた構造設計法については、2023年11月10日に一般社団法人日本建築センターの個別評定※を取得しています。

^※建築物の構法、部材、設備等を建築甚準法やその他の技術基準に照らし、構造安全性について評価するもの

実大木造2方向ラーメン架構試験体加力実験の様子

接合部拡大

■SDGsへの貢献そして今後の展開
企業価値の向上には、環境や社会への貢献がますます重要視されています。特に、「持続可能な開発目標（SDGs)」や「環境・社会・企業統治(ESG)」への対応は不可欠です。森林資源の循環利用は、SDGsに対応した重要な取り組みです。今後の建設業界において、大型建物の木造化が社会の要請に答える事であり、その結果、本構法の採用は企業価値向上につながると考えます。
今後、当社では今回の2方向ラーメン構造の施工実績、およびその知見をもとに木構造の発展をさらに進め、地上10階建てを見据えた、木構造中高層建築物の実現を目指していきます。

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