建物・土地活用ガイド

専門家への建物相談

2017/09/25

新工場建設において検討される国内回帰

「自動車や家電メーカーなどが相次いで国外から国内に工場の拠点を移している」というニュースが報道されるようになりました。一昔前までは製造拠点を海外に置くことで、人件費の高い国内で生産するよりもコストを抑えられ、収益を上げられるという考えが主流でした。では、なぜ現在の工場建築のトレンドは海外進出から“国内回帰”にシフトしつつあるのでしょうか。

加速する工場施設の国内回帰

日本企業の海外進出が盛んになり始めたのは、1985年のプラザ合意後です。円高の流れもあり、生産コストが低い海外への工場移転が急激に進められました。中国をはじめ、ベトナムやタイなど、日本企業はアジア諸国の“低コストの労働力”を頼ってきましたが、2012年後半以降の円安進行に伴い、変化の兆しが見えてきました。

国内回帰が加速している主な原因は2つ。1つには、「円安の長期化」が挙げられます。円安により、海外の生産コスト(人件費・材料費など)が高騰します。人件費削減のために生産拠点を移したにもかかわらず、コストアップになるのでは本末転倒です。自動車や家電メーカーは国内生産が有利と考え、自動車関係メーカーもそれに追随している状況だと言えます。

もう1つの原因として考えられるのが、「技術力の差」です。日本の技術者のクオリティーの高さを経営者はよく理解しています。1人あたりの人件費は海外に比べて高くつきますが、高品質による精度の高いモノづくりが見込まれます。さらに工場の自動化による生産効率の向上により、国内生産における人件費の削減につながるでしょう。


円安で続くリショアリング

2017年版の「ものづくり白書」によれば、海外に工場を持つ日本企業の1割以上が、2016年に国内に生産拠点を移しました。こうした企業が海外へ移管・委託した業務の拠点を再び国内に戻す動きを「リショアリング(reshoring)」と呼びます。2012年の第二次安倍晋三政権誕生以来、円安傾向により、製造業のリショアリングはさらに本格化するものと見られています。

しかし、一方でこの動きは一時的なものであるという見方もあります。実際に日本企業の海外進出の動きがまったくなくなったわけではありません。為替の変動にかかわらず、製品の需要がある国・周辺地域で生産する(地産地消)企業も多く残っており、すべての企業に共通した流れではありません。生産拠点を国内・海外のどちらに求めるのかは、それぞれの企業の戦略次第と言えるでしょう。


国内回帰で経済効果や地域創生も期待

企業戦略の手法として、「国内、海外生産を棲み分ける」というスタンスも増えています。国内の工場が忙しくなると、工場で働く人材がさらに必要になるため求人も増加傾向になると考えられます。国内回帰は新たな雇用を創出し、地方経済を後押しするものと期待される見方もあり、実際に国内回帰を宣言した企業には地方自治体からの問い合わせも増えてきているようです。

日本企業の国内回帰は、税収増加により財政的に苦しい地方の支援にもつながります。この動きを止めてしまうことなく、加速させるための鍵は政府の施策です。円安頼みの国内回帰にとどまれば、為替が逆転したとたんに再び海外進出し、国内が空洞化する危険もはらんでいるため、この現象を手放しで喜んでばかりもいられません。しかし、やはり日本国内に生産活動の場が戻ることは、日本人にとって歓迎すべきでしょう。

安価な労働力を求めて、大手を中心に海外に工場拠点を求める時代は終わりを迎えようとしています。技術力や生産力の差が顧客満足に直結するだけに、国内に大規模な工場設備を建てるほうが収益アップの可能性も高まるでしょう。国際化が叫ばれて久しい現代ですが、海外進出だけが事業拡大につながるわけではないだけに、高品質で精度の高いモノづくりを実現できる国内工場の新設を検討してみてはいかがでしょうか。


建物・土地活用ガイド コラム一覧へ