各業界で導入が進む、デジタルツールによる業務改革「DX(デジタルトランスフォーメーション)」。
髙松建設も例外ではなく、設計の初期段階から施工まで関係者全員が利用するBIMを導入しており、初期設計システム「TKMPLNsys(髙松建設プランニングシステム)」を自社開発・運用しています。本記事では、システム開発を主導したプロジェクトメンバーと、実際に活用する設計メンバーが語ります。

  • 大阪本店
    設計第7本部長
    BIM設計室長
    設計内製室長

    松崎 幹生

  • 大阪本店
    設計第7本部BIM設計室
    連携チームリーダー

  • 大阪本店
    設計第7本部BIM設計室
    開発チームリーダー

    下倉 聡史

  • 大阪本店
    設計第6本部設計企画部
    住宅系設計企画室

    山根 寛子

プロジェクト概要

課題・背景

  • お客様との対話時間の増加、建物の品質向上のために設計システムの全面刷新に着手
  • 社内唯一のソフトウェア開発経験者であった社員1名を中心に、ほぼゼロからプロジェクトチームを組織
  • 従来の作図システムからの移行に向け、社内一丸でノウハウを創出・共有

社内がつながり、「人」の価値が高まるデジタル化を

  • DX推進前と比較し、年間2万時間の作図作業時間を削減。
  • 削減した作業時間をお客様への提案工数増加、社内でのディスカッション活性化などに寄与。
  • 現在も社内でのフィードバックと改善サイクルにより初期設計システムの機能拡張が進む。

Theme 01

“年間2万時間の対話”を生み出すDX体制

山根

このクロストークは、「髙松建設のDX(デジタルトランスフォーメーション)」がテーマです。当社では、営業部、設計部、工事部の社員それぞれが、お客様の大切な不動産をお預かりし、資産を将来へと残し・活かすために挑戦を続けています。そうした日々の事業活動の裏側では、さまざまなシステムが働いていますね。

松崎

その通りです。髙松建設の一番の強みは、常にお客様の立場に立ち、お客様の事業を成功に導くために考え抜く現場力にあります。私たち設計第7本部BIM設計室のミッションは、業務で使用するシステムを実装しアップデートすることで、品質や技術の向上に寄与すること。直接お客様の前に立つ機会は多くありませんが、目指す価値は同じです。

ええ。デジタル化の目的は業務品質とスピードの向上ですが、その先にはお客様との対話、社内での対話を増やし、当社の地力をさらに底上げしたいという想いがあります。特に、山根さんが所属する「住宅系設計企画室」のような設計現場の仕事をいかにテクノロジーで支援するかを考えてきました。

山根

住宅系設計企画室は、営業と一緒に案件を進めながら、質の高いプランを短時間で作成するセクションです。設計には非常に複雑な計算や手続きが存在しますが、その大部分をBIM設計室が開発した独自システム「TKMPLNsys(髙松建設プランニングシステム)」が助けてくれています。導入前に比べて、明らかに仕事のスピードが上がったことを実感します。

松崎

現状では、設計初期のプラン作成において1物件あたり平均30時間ほどかかっていた計算・手続き・作図といった作業が、10時間程度まで短縮されています。当社の大阪本店ではこのプラン作成を年間1000件ほど行っていますから、削減時間ベースでは1年で20,000時間。この削減時間がお客様との「人と人との対話」に活かされていることになります。

山根

いま髙松建設では、設計のあらゆる社員がTKMPLNsysを毎日使い、作業にあたっています。私も初期からツールのブラッシュアップに立ち会ってきましたが、ここまで普及するには長い道のりがありましたね。

Theme 02

独自システムを築いた“特命部隊”の挑戦

松崎

TKMPLNsysのベースとなっているのは、建物の形状や面積など多種多様な情報をコンピューター上にある3次元のモデルに落とし込んで活用する「BIM(Building Information Modeling)」というシステムです。現在ではBIMは多くの建築会社で活用されていますが、以前はCADという2D作図ソフトが主流で、建築業界全体がCADからBIMへの切り替えに挑戦しました。

下倉

国土交通省も推進に注力していましたが、設計者の立場では、設計ツールの変更は使い慣れた道具を持ち替えなくてはならないような感覚です。髙松建設としても前例のないチャレンジでした。

そうですね。当社でBIMの本格運用が始まったのは2019年、専任のチームを組んで実装していきました。当時の社内でBIMの経験を持っているのは私1人で、初めは基本的な操作方法や各部署との連携の進め方など必要なことをまとめてマニュアルとして整備し、BIM担当の中で共有していきました。松崎さんは2020年の入社ですね。

松崎

私がジョインした当時はまだまだ社内にBIMが浸透しておらず、いかに人材教育を進めながら実務で使える状態にしていくかが最初の課題でした。下倉さんの言う通り「従来のCADで設計したい」という切実な声も、設計の現場からは上がってくるわけです。

山根

意識を変えるところからのスタートですね。どのように着手していきましたか。

松崎

まずはBIMの優位性が出やすい業務フローから導入し、BIMでの設計で価値が上がることを認識してもらえるよう社内コミュニケーションを心がけていました。実際にツールを活用する立場である、山根さんの方ではどうでしたか?

山根

設計企画の仕事は、スピーディなプラン改善が極めて重要です。CADは使い慣れた道具ですが、「BIMをマスターすれば、素早くお客様のご要望を反映できる」「他部署との連携スピードも上がる」とチームで共有しました。まずは操作を身につけながら、疑問点や改善点は率直に社内で議論しようと。使っていくなかで出てきた気づきや要望を書き込めるプラットフォームを、下倉さんが整備してくださいましたね。

下倉

はい。私はプログラミングを担当していますが、BIM設計室に配属される前は建築パース作成に従事していました。だから設計企画側の課題もよくわかります。疑問に1つずつ回答していくうちに、設計業務にもBIMが馴染んでいきました。

そうした社内の意見交換がTKMPLNsysというシステムの下地になっていったと思います。真のBIM活用のためには、既存のソフトを覚えるだけでは不十分です。髙松建設の設計者が持つ技術を存分に活かせる、血の通ったシステムにしていきたい。そのために2022年から当社独自のシステムの本格的な開発に着手し、下倉さんのような開発担当のメンバーに力を発揮してもらいました。

下倉

日々の業務に使用するソフトですから、とにかく操作性にこだわりました。初期は機能の不備もバグも発生しましたが、そのたびに社内から集まるフィードバックを次々とシステムに反映することで、当社ならではのBIM環境へとのカスタマイズとアップデートが重ねられていったのです。実運用する皆さんがBIM設計室を信頼して、改善要求を出し続けてくれたおかげですよ。

松崎

社員の声を起点に、全社で磨き上げていく——それが髙松建設のDXです。

Theme 03

進化する技術
変わらない『人』の誇り

山根

TKMPLNsysは2023年から社内で使われはじめ、私自身も幾度も操作モニターに参加しフィードバックを返しました。そのたびに驚くほどのスピードで機能が改善されていますね。

下倉

特にTKMPLNsysが役に立っている場面を教えてください。

山根

主には作図作業です。設計は敷地の形状を把握し、面積を算出して作図を進めます。CADを使っていた時代には、面積の算出は手作業で、印刷した帳票に書き込んだ数字をソフト上に転記しなければならないこともありました。しかしTKMPLNsysなら全てのデータがシステム上で統合されます。面積を自動算出し、確認者が納得できる根拠のある資料を生成できるまでになっています。

今後は、実施設計図として使えるレベルまで機能を拡張し、AIによる自動作図も目指しています。積算などの他部署との連携機能も強化したいですね。企画設計から施工までをTKMPLNsys上で一気通貫して行える、全社員が使う総合的なツールに育てていきたいと思います。

山根

TKMPLNsysがアップデートしたおかげで、私たちはテクノロジーでは代替できない価値に時間を使えるようになったのです。帳票をブラッシュアップしたり、プランの質を上げたり、内部で議論したりといった「創り出す」ための時間が増えました。作図時間が短縮できたのだから、お客様のためにもう一つ別のプランをご用意しよう。社員たちはそうした自発的な姿勢で設計に向かい合うようになりました。

松崎

私たちBIM設計室はデジタル化を進めた立場ですが、大切なのはアナログの力だと思うんですよね。お客様と対話するときの情熱や、ご要望を建物の形として実現しようとするイマジネーションのことです。ツールがどれだけ進化しても本質は変わりません。これからも「人」が本来発揮するべき力の最大化に向かっていく、髙松建設のDXを推進していきましょう。

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