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土地活用・建築の基礎知識税と法律の基礎知識

2018/07/23

土地活用する前に把握すべき都市計画法

たとえば、親から相続した土地に住宅やアパートの建築を検討するものの、さまざまな規制により実現に至らなかったというケースは少なくありません。この際、“待った”をかける可能性があるのが「都市計画法」です。都市計画法とは、地方自治体が基本計画に則って、都市の発展を推進し秩序ある街づくりを進めていくための法律であり、土地の利用や建物の規制に関して定めたルールです。今後、土地活用を検討される場合は、現有の土地や購入を予定している土地にどんな規制があるのかを知っておくことは必須だと言えます。

自分の土地だからといって好き勝手にできない

都市の健全な発展と秩序ある整備を図ることを目的とする法律である都市計画法。もし、この規制がなかったとしたら、社会はどうなるでしょうか。土地を所有している個人や企業が、好き勝手に開発行為をすることで国土の至るところで都市が無秩序に拡大する「スプロール化※」が常態化してしまいます。

実際、現行法が定められる1968年以前の日本では、無計画な宅地開発が行われたため、道路、水道、ガス、電気などのライフラインの整備が追いつかなかったり、街を走る道が迷路のように入り組んでしまって防災上きわめて危険な状態になってしまったりと、さまざまなトラブルを抱えていました。しかも、一度スプロール化すると、その地域では地権の細分化や地価の下落などにより、改善の道が極めて困難になるという悪循環が起きてしまいます。

こうした反省に基づいて制定されたのが都市計画法です。土地の利用や建物の規制に関するルールを規定したもので、その内容は各自治体で異なります。個人の土地ではあるものの、すべてを自由に開発できるわけではないのです。要するに秩序のある町づくりの視点を大切にするために作られた法律と言えるでしょう。

※「スプロール」とは「虫食い」という意味の英語。虫食いが進むように、都市が無秩序に拡大していく現象を指しています。


都市計画法に基づいて定められている土地活用

都市計画法は、土地と建物を有効活用し、都市の健全な発展を促すための法律ですが、その前提として定められているのが「都市計画区域」の存在です。この都市計画区域には、市街化を積極的に図るべき区域「市街化区域」と市街化を抑制して自然や緑地を保全すべき区域「市街化調整区域」という明確な“線引き”が設けられており、そのいずれにも該当しない区域は「非線引き区域」と呼ばれています。

市街化区域 すでに市街地を形成している、またはおおむね10年以内に優先的・計画的に市街化を図るべき区域
市街化調整区域 市街化を抑制すべき区域
非線引き区域 市街化区域でも市街化調整区域でもない区域

つまり、市街化区域は開発を行えるエリアのことで、反対に市街化調整区域は開発を抑えるべきエリアだと言えます。したがって、前者では下記で述べる「用途地域」といった制限はあるものの土地活用には自由度があります。しかし、後者では山林や原野、田畑など現状の自然環境を保全するために都市化をあえて制限しているので、当然ながらそこに建物を建築することはできず、活用の道はほぼ閉ざされています。

仮に、親が遺してくれた土地を譲り受けたとしても、そこが市街化調整区域に指定されていると新たに建物を建てられないので注意が必要です。ただし、駐車場や太陽光発電施設など建物に該当しない施設の建築は可能です。また、土地を資材置き場などとして、建設会社などに土地を貸すという方法もあります。いずれにせよ、建物の建築が制限されている市街化調整区域では、このように活用の道はごく限られていると言えるでしょう。


市街化区域の用途地域と制限について知っておく

市街化調整区域とは異なり、市街化区域では土地活用の道は格段に広がります。居住用の住宅を建てるのもよし、賃貸用のアパート、マンションを建てて賃貸経営によって家賃収入を得るのもよし、コンビニ店舗用に土地を賃貸ししてそこから収益を得るのも選択肢となります。しかし、前述したように、市街化区域にも「用途地域」という制限があり、エリアごとに建築できるものの種類、規模、条件などが細かく規定されているので、実際に活用を検討する際は詳細をよくチェックしておきたいところです。

なお、下記では都市計画法で定められた市街化区域の用途地域と建物の用途を表にまとめましたので参考にしてください。

第一種低層住居専用地域 主に2階建て程度の戸建て住宅やアパートが建築可能
第二種低層住居専用地域 第一種に加え、コンビニなどの小規模店舗が建築可能
第一種中高層住居専用地域 3階建て以上のアパートやマンション、中規模な店舗が建築可能
第二種中高層住居専用地域 第一種より広めの店舗やオフィスの建築が可能。マンションを中心とした中高層の住宅を建てるのに最適
第一種住居地域 住居に加え、中規模の店舗や施設が建築可能
第二種住居地域 住居に加え、大規模な店舗や施設、ごく小規模な工場が建築可能
田園住居地域 農地と調和した2階建て程度の戸建て住宅やアパートなどの低層住宅の建築が可能
準住居地域 住居に加え、大規模な店舗や施設、小規模な倉庫や車庫、ごく小規模な工場が建築可能
近隣商業地域 住居に加え、ほとんどの商業施設、オフィス、ごく小規模な工場が建築可能
商業地域 ほとんどの商業施設、オフィス、小規模な工場に加え高層マンションなど住居も建築可能
準工業地域 危険性や環境悪化の懸念が少ない工場の建築が可能で、住居や店舗の建築も認められている
工業地域 どんな工場でも建築可能で、住居や店舗の建築も認められている
工業専用地域 どんな工場でも建築可能だが、住居や店舗の建築は認められない

親から相続するなど土地を手に入れても、自由な土地活用ができるかというと、そうとは限りません。そのため、相続を予定しているのであればなおさら、都市計画法について学び、所有予定の土地でどんな活用法が可能かをあらかじめ把握することが大切です。また、用途地域を知るには、「役所の都市計画課で聞く」「市販の都市計画図で確認する」「業者に確認する」「インターネットで調べる(自治体によっては)」などの方法があります。まずは自己所有地が何に該当するのかを確認することから始めましょう。


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